vol.11

花鳥風月vol.11

 

 

 

INTERVIEW 1

『大切な物』づくり
~無垢材の家具がつくる生活空間

無垢の家具、インテリア小物木工房 ひょうたん蔵

  ー飯田了司さん 飯田周子さん


INTERVIEW 2

 心がつくる街に永く愛される店

-   ダンダダン酒場 株式会社NATTY SWANKY

         社長  井石裕二さん

 

自然素材住宅のお宅訪問

 日本の家づくり~安心して暮らせる家

INTERVIEW 1 「大切な物」づくり~無垢材の家具がつくる生活空間

ひょうたん蔵

愛川町の北西にある豊かな自然の残る渓谷、その下を流れる川沿いの道を走っていると「ひょうたん蔵」のショールーム兼工房があります。ショールームではひょうたん蔵の家具を使った生活空間が演出されています。その中にひょうたんビト(※4ページ末に写真)が居て、自由に空間を遊んでいます。自然素材がつくり出すちょっとした異空間。その隣にあるのが工房。その特徴は、無垢材で作った長く愛着を持って使えるものづくり。そのものづくり精神には日本人の心が息づいていました。

魅力が無くなる物と、無くならない物

ひょうたん蔵 自然素材の家具

「現代社会の生活は簡単に使い捨てされていく物で溢れかえっています。その時の流行に合わせた安直な製品が安い素材を使って大量に作られ、ブームが去ると人々は見向きもしなくなりそれが全部ゴミになる。それに代わってまた誰かが新しいブームを生みだそうと必死になっている…。そんな事が繰り返されているのが今の日本の消費構造なのだと思います。」と了司さんはおっしゃいます。今の日本社会は多くを生産することで利益が出る仕組み。大量生産を維持するには、古い物を捨てて、新しい物を購入してもらわなくてはいけません。そのために流行は創り出されています。それが大量生産→大量消費という消費構造です。過去デザイナーの経験を持つ了司さん。自分がデザインした物が使い捨てされる現実。その日本の消費構造自体いい部分もあるけども、自分自身がそのような仕組みの一員として、物を大量生産、大量消費する事にとても抵抗感を覚えたそうです。了司さんは考えました。そもそもなぜ人は使い捨てするのか、それは使う人にとって物の魅力がすぐ無くなってしまうから。それなら長く愛着を持てるものづくりをしよう。そうしたら使い捨てせず、大切に長く使ってもらえる。

ひょうたん蔵 自然素材の家具手作り

では、長く愛着を持って使えるものづくりとは?
「お客さんのご希望をお聞きした上でお客さんが本当に気に入ってもらえるものをつくる。希望を最良の形にするために丁寧にじっくりと作る、そうすることで世界に一つのお客さんのための製品ができる。出来た物がもしかしたら他人にとってはまったく好みじゃなかったり、まったく意味の無い物になるかもしれないけれど、その人にとっては他に代え難い大切な物になるのだと思います。物はどんなに頑丈に作られていても形ある限りいつか壊れますが、その人にとって大切な物だったらまた修理して使いたいと思ってもらえるはずです」
長く愛着を持って使える物とは、使う人にとっての『大切な物』。了司さんの中でそれを形にする物づくりがはじまりました。

作る人の顔が見える

ひょうたん蔵

家具、それは毎日暮らしの中にある物。私達にとって身近な存在です。また、インテリアとしても家の雰囲気を左右します。家具によって生活空間が変わるとも言えます。そんな人の生活にとって大切な存在の家具を「長く愛着を持って使える」物にするには、3つのバランスが必要だとおっしゃいます。
『使う人の要望や生活スタイル
    にマッチしたデザイン』
『造りや材料が丈夫であること』『愛着を持って使えるデザイン』
このバランスを取りながらひょうたん蔵は家具を作ります。
『使う人の要望や生活スタイルに
マッチしたデザイン』とは
使う人の要望や生活のスタイルにマッチしていないと、不便さが出てくるため、長く使い続けることはできません。ひょうたん蔵では、じっくりと3、4か月かけてお客さんの要望を聞き、それに応えた提案をします。場合によってはお客さんのお宅まで行き、生活動線などを考慮した家具のかたちを模索します。そうすることで、生活スタイルにマッチした家具デザインが作り上げられていきます。了司さん「この材料、この家具いいでしょうというのではなく、普通に暮らしている人にとっての木のあり方を模索する」作り手とお客さんとの時間を掛けたやりとりの中で、今の生活スタイルにマッチした新しい唯一無二のデザインが生まれます。

『造りや材料が丈夫であること』とは

ひょうたん蔵 家具

活の中で長く家族と共にある家具。年月を重ねるほどに家族の思い出が刻まれ、愛着が沸いてきます。その大切な存在になった家具が時の経過で剥がれてきたり傷んできたりして使えなくなることは悲しいことです。しかし、買う側としては『丈夫さ』というのは見た目から分かりづらく、時間が経ってみないと違いが出ない所。それゆえ『丈夫さ』を重視にするかは作り手の考え方次第で変わる部分です。もちろん、ひょうたん蔵では長く使ってもらうため丈夫に作ることを大切にされています。「信用してもらうには人なのかな?この人に任せたら悪いようにはしないだろうと思ってもらえれば」とお二人。顔と顔を合わせてお客様と思いを通わせることを大切にされています。
また『丈夫さ』は素材、造りなどで決まります。ひょうたん蔵が素材として無垢材を使う理由は『丈夫』だからです。合板など接着材を使った木材は時間が経つにつれ剥がれていくことがあります。よく水拭きするテーブルなどは特にそうです。無垢は合板と違い、剥がれることはありません。万が一壊れたりした時も、ひょうたん蔵さんは修理してまた使えるようにします。毎年『ひょうたんビトのカレンダー』を作って、家具を使ってもらっている家庭に送るのもそのため。「カレンダーを送るのは忘れないでねというメッセージ。もし家具に不具合があった場合は遠慮なく相談してほしい。長く愛着をもって使っていてほしいから」と周子さん。

花鳥風月、日本人の心が息づくデザイン

ひょうたん蔵

ひょうたん蔵独特の、木のぬくもりを感じ、四角い収納なのに柔らかい意外性のあるデザインのこと。その起源について了司さんに聞きました。「日本人は古来から自然界の様々な物をモチーフとしたセンスの良いものづくりをしてきましたよね。」例えば日本料理や和菓子、それらは職人が四季折々の自然から感受した美しい『色、形、質感』を食材で表現します。その美的感覚は今や世界でも認められています。「昔の人々は生活の中にうまく取り入れ、精神性においてはとても豊かな暮らしをしてきたと思います。」花鳥風月という言葉があるように自然の移り変わりやその趣に風流を感じたり、楽しむ心が日本人には昔からありました。

ひょうたん蔵 ひょうたん人

「そういった感覚は日本人である私たちにも本質的に受け継がれているのかなとは思いますが、現代社会においてそれもだんだん薄れて来ているように感じます。ひょうたん蔵としては人を和ませられるぬくもりのある家具を作る事が一つの目標でもあるのですが、それを一番形にしやすいのが自然素材(無垢材)を使い、自然界にある造形(生物・植物など)をモ
チーフとし、デフォルメする方法です。」日本人に受け継がれる花鳥風月の心。その心から派生したデザイン。「デフォルメはもちろん私の感性のフィルターを通して行います。それによってひょうたん蔵らしさといわれる個性・オリジナリティーみたいなものが表出されてくるのかもしれません。生活空間の中で機能一点張りではなく、どこかユーモラスで愛着の持てる、まるでペットの様な家具やインテリア小物があっても良いんじゃないか、という思いで作っています」ひょうたん蔵の木工クラフトには「顔」があるものが多く、家具のデザインにもカエルの足を思わせるテーブルの脚もあります。

ひょうたん蔵 家具

ひょうたん蔵の家具にはまるで命が宿っているかのようなファンタジー性を感じます。そのデザインは元々生き物だった植物のあたたかさから表現され、私たちに親近感を持たせます。このデザイン発想の独創性が他にはないひょうたん蔵らしさ。ひょうたん蔵のマスコットキャラクターであるひょうたんビトもこの発想からデザインされました。
「日本人の暮らしの中にも、もっともっと『豊かさ』や『彩り』を加えていくべきだと思います。」生活の中にある家具のデザインイメージ。それは共に生活する人の心にも影響するもの。現代生活の中でも花鳥風月を楽しめれば、もっと豊かで広がりのある生活ができるのかもしれません。

安定よりやりがい

ひょうたん蔵 自然素材家具

現在40代のお二人が一から立ち上げた「ひょうたん蔵」。長く愛着を持って使えるものづくりをするためにここまでやってきました。苦しい下積み時代を経て今では無垢のオーダー家具だけで生計を立てることができるまでに。その現在に至るまでの道のりとは。

ひょうたん蔵 花鳥風月

空間デザイナーだった了司さんは『長く愛着を持って使えるものづくり』ができる職人になるため、箱根の寄木職人に弟子入り、その後平塚高等職業技術校木材工芸科にて家具製作の基礎を学びました。その平塚高等職業技術校で周子さんとも出会います。周子さんはOLをしていた時、『与えられた仕事をこなすのではなく、自分で物づくりがしたい』という思いに。その実現ため平塚高等職業技術校木材工芸科に入学します。自分の工房を作りたいという気持ちが一致して、卒業後二人はひょうたん蔵を立ち上げました。立ち上げ当初は仕事も少なく、会社勤めの後集まって木工家具を作っていました。その他に下請けをしながらも自分たちの木工品を作り続けた二人。「生きていくために下請けの仕事もしたのですが、お金にはなるけど、やりがいを感じられない」自分たちの木工品づくりへの熱は下積み時代により強まったそうです。自分たちの木工品の良さをもっと伝えたい。その思いからショールーム設立へ。ショールームでは実際に家具の質感を体感してその良さをわかってもらうことができます。加えて、作り手とお客さんのコミュニケーションの場になればという想いも。ショールームのおかげで、ひょうたん蔵の良さがお客さんに伝わりやすくなりました。

共通のテーマは「楽しい」

ひょうたん蔵 ひょうたん人

ひょうたん蔵らしい家具の「楽しさ」みたいなものを大切に共に仕事をしています。「やっぱり自分達がデザインした物を自分達で作りたい。作った物で人が喜んでくれたら嬉しい」それが二人のやりがいです。

制作現場のもったいない精神

ひょうたん 乾燥

『長く愛着を持って使える物』づくりをしている二人だから自然体で過ごすエコ生活。大切に物を扱う心はその制作スタイルや生活スタイルにも反映されています。
「特別意識してやってる訳ではないのですが、よくよく自分達の生活スタイルを見返してみると、結構エコな暮らしをしているかもしれませんね。家具作りにおいては自然素材を使ってなるべく長く使っていただけるような物作りをする事。自然素材で作られた物は万が一廃棄する時でも環境に優しいはずです。家具作りで出た端材はインテリア小物の製作に回し、、それにも使えない木端は薪にします。燃した後の灰はひょうたんを作っている畑に使います。大量に出るおが屑は牧場やご近所の畑をやっていらっしゃる方に堆肥作り用にもらっていただいてます。なのでうちは産業廃棄物をほとんど出していません。」自然に還る素材、自然素材だからできる循環生活。

ひょうたん

「使える物はとことん使いきるという『もったいない精神』です。基本、二人ともケチなだけなんですけどね(笑)。」日本人の心、もったいない精神。昔の日本人は物の価値を分かっていたからこそ、生まれた心かもしれません。
 長く愛着を持って使う物は、自分の生活スタイルに沿ったもの。そしてその生活を豊かにするもの。使い続けていると使っている人の生活そのものになっていきます。つまり「長く愛着を持って使う物」は、使う人の生活の本質を写し出すもの。
『物の価値』それは値段に左右されるものではなく、流行廃りでもない、使う人が決めるものです。生活空間ぐらいは自分中心でもいい!買い物をするときに、大きな視野を持って自分の人生の一部である生活を豊かにする物を選ぶ。そうすると、無駄のない買い物に繋がるのかもしれません。

INTERVIEW 2 心がつくる街に永く愛される店

活気とは何が生み出すのでしょう。人?企業? 
人と人との繋がりが薄くなる現代社会の中で、
街に住む人とお店の繋がりを大切にされている会社があります。
永く街に愛されるお店づくり『NATTY SWANKY』の社長、
井石裕二さんにお話を伺いました。

肉汁餃子製作所 ダンダダン酒場

調布駅の大型ビル群を少し離れ、生活道路を進むと昔ながらの商店街が立ち並びます。その中のお店の一つが『ダンダダン酒場1号店』。1年で3割、3年で5割潰れるという厳しい飲食業界の現状の中、ダンダダン酒場を営む会社『NATTY SWANKY』は 3年で東京に5店舗展開。すべてが繁盛店で日経レストラン「経営者が視察すべき店30」にも選ばれています。
ダンダダン酒場の特徴、それは小麦が香る全粒粉で作られた皮の中に肉の食感を感じる餃子のあん、食べる時溢れ出る肉汁。それはすべて店員さんが手作りしています。餃子はビールやご飯とも抜群の相性です。更に、地域に開かれたお店づくりで街に愛されるようなお店づくりを展開、地域のイベントにも積極的にも参加されています。

街の顔

ダンダダン酒場 肉汁餃子製作所

「この店があるからこの街に住んでるって言ってもらうこともある。通り沿いのお店は街の顔になります」と井石さん。お店にはその場を好む人が集まり、食事をしながら話をしたりするコミュニケーションの場所にもなります。それによって作り出されるにぎわいもあります。結果、街のにぎわいに繋がることも。『NATTY SWANKY』の企業理念の中にある一文、「Natty Swankyの店舗を通して、小さなコミュニティを街の中にたくさん誕生させたい、そして街を盛り上げたい、それがNatty Swankyの願いです」それは街とお店の共存のかたち。そのお店が社交場としての機能を果たし、街がにぎわいます。

肉汁餃子製作所 ダンダダン酒場

そんな街の社交場になるようなお店にするには、また食べたくなるおいしい料理や飲み物、どんな年齢層の誰もが通いやすい雰囲気、顔なじみの親しみやすい店員さんなど地域に開かれ、街に愛されるお店づくりをしていく必要があります。地域に開かれた、愛されるお店づくり、その企業理念の基、調布市近郊の飲食店経営者の方との交流会の幹事を務めることも。お互いが刺激しあって高め合え、情報交換などが出来て、もっと調布の街が盛り上がればという思いからです。さらに地産地消の取り組みも。調布市内で作られている農作物(完全無農薬、自然栽培のレモン)を利用して新商品が作れないか模索されています。その他にも調布市が主催する食べ歩きイベントなどにも参加。地域活性になるようなイベントでにぎわいを生み出す貢献をすることも『NATTY SWANKY』のかたちです。

餃子を創り出す心

肉汁餃子製作所 ダンダダン酒場

ダンダダン酒場の軸である「餃子」。餃子は1日9000個という出数を記録するほどの繁盛店にもかかわらず、すべて手作り。
餃子の中に「街に愛される店」になるための精神が息づいています。魂を込めて作ったものがお客様に認められ初めてお金がいただける。支持して通ってもらっているお客さんへの感謝の心、忠誠の心。その心が常においしい餃子を作り出します。

肉汁餃子製作所 ダンダダン酒場

(井石さんブログより引用)
ウチも常に美味しい物を追求しながらお店をやってます。
何百回も試作して作りあげた餃子が非常に好評で皆さまに喜ばれています。全て手作りで作っているので労力は半端ないです。でも、手作りだからこそ働いてるみんなは餃子に愛着が湧くし、餃子に魂が宿るのです。大変な思いをしているからこそ、お客様が必死で稼いだ結晶のお金を頂けます。楽していたら、お金を頂くのが申し訳なくなってきます。お客様も餃子を家で作れますが手間と時間をかけて作ったのに、食べるのはあっと言う間という食べ物。飲食店、究極は手間を売る商売。一時の利益を求めて手間を省いたら、それは長く続かないだろう。 街に永く愛される店作りがモットーですので、一時の繁盛とかはいらないです。なんとなく、食べたくなる餃子。そんな餃子を目指しています。

ダンダダン酒場 肉汁餃子製作所

おいしい餃子を提供し続けること。それはそのお店への信頼へ繋がります。それが手作りの餃子なら生み出す社員のモチベーションが常に高くなければなりません。そのモチベーションの高さがダンダダン酒場を支えています。

自分のためから地域のために

ダンダダン酒場 肉汁餃子製作所

ただ『おいしいお店』に留まらない、ダンダダン酒場。自分達の利益の追求だけではなく、支えてくれる人に感謝し、人のためにものづくりをしていく。その精神が「街に愛される店づくり」の基になっていきます。
井石さん「店のことを好きなスタッフは多い。餃子も買ってきたものを出すことはなく、正々堂々すべて自分たちで作っている。それをお客さんに食べてもらって喜んでもらう。そういうものの積み重ねから店への愛着ができるんじゃないかな」懸命に作った餃子への愛着、それをおいしそうに食べてくれるお客さんを見ることでのやりがい。その場所を提供してくれる店への愛着に繋がる。Natty Swankyが大切にしている5つの心があります。『向上心 、好奇心 、探究心 、自立心 、忠誠心』 仕事が出来るとか頭がいいとかそんな事よりもこんな気持ちを備えていて欲しい!そんな思いからできた指針。今の繁盛があるのはNATTY SWANKYの従業員にこの5つの心があるから。5つの心は従業員の人としての志とも言えます。人としての志(5つの心)が高ければ、ステップアップしていける職場環境。どんな社員も志があれば夢を描き、希望をもって仕事をすることができます。忠誠心を持って人のためのものづくりをすることが、おいしい餃子を作り出し作り手のやりがいを生み出す。更にその精神を持ち続けることで自分の成長にも繋がる。人のためが自分の成長になる、それがNATTY SWANKYの仕事場です。

目の前の仕事の中に人生の可能性がある

ダンダダン酒場 肉汁餃子製作所

Natty Swankyの誕生。それは、井石さんが元々持っていたチャレンジ精神を、本気で自分の人生や仕事に向けたことから始まりました。そうなるキッカケを与えたのはある本の出会い。その本の中にNatty Swankyの仕事スタイルのルーツもありました。
井石さんがその本に出会うまでの道のりとNatty Swankyの誕生の軌跡とは。

肉汁餃子製作所 ダンダダン酒場

(ブログから引用)
大学に通ったものの、時間をお金で買っているように思う大学生活に理不尽を感じ、3ヶ月くらいで行かなくなりました。その後は、当時はいわゆるパチプロというやつで、ギャンブルで生計を立てていました。でも、パチプロ生活は将来が見えないので、少しづつ収入のギャンブル比率を減らそうと思って、ゲームセンターでアルバイトを始めました。そこで僕の人生に影響を及ぼす出会いがありました。そのゲームセンターではある人の書いた本を読まなければいけないという習慣がありました。そう、稲盛和夫さんの「心を高める、経営を伸ばす」という本です。
本当に衝撃でした。大げさでなく180度仕事に対する考え方が変わりました。大体お店は1人で営業していたので、それまではサボる事しか考えて無かったのですが、その本を読んでからはゲーム機を磨きまくりました。笑
僕の人生を変えてくれた出会いです。本当にラッキーだったと思います。その後7年間会社員を務めていたのですが、自分はサラリーマンには向いてないと思っていたので何かいい商売はないか?といつも考えていました。その中には飲食店も含まれていました。その思いが年々募り、自分で考える飲食店の運営スタイルが成熟したとき、飲食店の起業に踏み切りました。

「心を高める、経営を伸ばす」という本

稲盛氏の経験談も交えながらの生きるアドバイス。仕事に自分の人生に迷った人生の岐路に立った時読むと一つの答えを提示してくれる本。
一瞬を大切に過ごせば自分の人生を変えるような衝撃的な出会いを感じ取ることができ、人生のドラマが大きく展開する。人が一生のうちに長い時間過ごすのが仕事。その仕事を通して自分が社会の役に立つことができれば、幸せな人生だったと感じることができる。著者が自らの体験を通じて導き出した式:人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力。この式が示すものは、熱意の量によって仕事の成果は積算式で変わってくるということ。加えて人の生きる姿勢(人生哲学)を持てるかどうかで人生は大きく変わる。またこの本では人類社会のためにというような、私心のない純粋な願望から発したものでなければ会社は長続きしない。という記述もある。

ダンダダン酒場 肉汁餃子製作所

(以下ブログから引用)
チャンスやヒントは意外と目の前にあるものです。
でもそれらはこちらが受け止めようとしなければ決して自分の目に飛び込んできてはくれません。だから常にアンテナを高く張る。
意識しないと目に飛び込んできません。意識してアンテナ張ると、色んな発見があります。
今日も色んなヒントをいただきました。「チャンスは遠くではなく、目の前に」

肉汁餃子製作所 ダンダダン酒場

「稲盛さんの本を読んで、仕事ってやりがいのある楽しいものなんだ。自分を日々磨く事が楽しく生きるコツなんだ。と気づかされました。」と井石さん。稲盛さんの本に感銘を受けた井石さんの仕事スタイル、『仕事は人生を豊かに楽しく彩ってくれるものだということ。仕事の成果は日々の熱意や志、努力次第で変わること』。
井石さんが定職につかなかったのも、仕事を楽しんでるように見える大人達が周りにいなかったから。「今でもそうかもしれませんけど、子供たちや若い人には仕事を楽しんでる大人達を見る機会が少ないと思います。目にする大人はテレビで酔っ払って会社の不満を愚痴る、クダ巻いてるサラリーマンとか…。だから僕は楽しんでる姿をうちの連中には見せているつもりです。だからたとえ小さくても、夢と希望は与えてあげたいです。」社長が仕事を楽しんでいる姿を見ると、そのやりがい、充実感が社員に伝わります。それは仕事に対する夢や希望を与えること。その生き方は次の世代の夢や希望になっていきます。

ダンダダン酒場 井石裕二

井石さん「過去の栄光的な事とかを自慢するのがあまり好きではありません。話すのも聞くのも。大事なのは今と未来だと思ってます。でも勝負してないと気がすまないのはギャンブラー時代に培ったものかもしれませんね。笑」ギャンブラー時代のようなヒリヒリする感覚は今の日常にいくらでも転がっているとおっしゃいます。社員や地域への配慮、社長という役目の重責に不自由を感じませんか?という問いに「自由」と言い切る井石さん。「お客様にお店を褒められる事、スタッフが成長する事、繁盛店を作る事、いろんな施策を考える事、仕事を通じていろんな人に出会える事、もちろん利益が出せる事も。うん、仕事に関する全てがやりがいです」。いい店をつくるためには人への感謝は不可欠。それも含めて仕事にやりがいや充実感を感じて経営されているから「自由」という言葉が出てくるだと思います。『忠誠心 :関わる全ての人々に感謝し、忠誠を尽くし、恩返しをする』という感謝の心、自分を支えてくれる従業員やお客さんや地域の人あってのNATTY SWANKYという心、それは井石さんに息づいています。

ダンダダン酒場 肉汁餃子製作所

人の心が味、店、街の雰囲気を創り出す。人と人との心が通じることで新しいものが生まれる。何かを生み出す力は人の心の中にある。その心の中にある力が仕事を、社会を通して何かを生み出すエネルギーとなっていく。今後も店舗数を増やしていくダンダダン酒場。その出店場所が街を活性化する心のエネルギー発信基地になって行けばいいなと思う取材でした。

自然素材住宅のお宅訪問 日本の家づくり~安心して暮らせる家

伝統構法手刻みの家 お宅訪問

家族にとって大切な空間「家」。「60歳にして持ち家はじめてなんです。それまでずっと工務店を探し続けていたんです。終の棲家というか、みんなが納得して家ができたのはよかった」と奥様。そんなK邸で今回お話を伺いました。

伝統構法手刻みの家 お宅訪問

Kさんご家族が家づくりの上でこだわったこと、それは「無垢の家」でした。なぜ『無垢』(※1)なのか、以前リフォームされた家にKさん一家が住み始めた時、家族全員シックハウスの症状が現れたことにありました。原因は、壁紙の接着剤だったそうです。加えて、その建物は気密性が高い構造。調湿が出来ない家はカビの温床に。「パンが3日でカビたり、家具も裏側のベニヤがベコベコにたわんでいたり…。このような経験から、自分が作る家は接着剤を使わない無垢の家にしたいと考えていたそうです。

伝統構法手刻みの家 お宅訪問

また、過去にご主人は一か月に30~40軒以上の家を見て、その家の価値を査定する仕事をされてきた方。更にご友人と共にログハウスを建てた経験も。今まで色んな家を見てきた分、自分が家をつくるならちゃんと納得できる良い家にしたいという想いを抱いていました。「家とは一番長くいる大切な場所。妥協なく造り、愛着を持って暮らしたい」とご主人。

工務店を決めるのは難しい。

伝統構法手刻みの家

「家はできている商品を持ってきて『これください』と言うものじゃないから」とご主人。どんな大工がどんな材料でどういう設計の家をいくらで建ててくれるのか…。インターネットなどで関東の工務店を探すと、数多くの工務店がヒットします。その中から自分の家を建ててもらう工務店を探すのは大変な作業です。

大工の棟梁

伝統構法手刻みの家

職人の手仕事に興味があったご主人はトレカーサ工事が手刻み(※2)でも施工することを知り、大工の棟梁から手刻みの話を聞くことにしました。棟梁の長谷川から手刻みの説明を聞いていると、手刻みに対する長谷川の熱意が伝わってきたとご主人はおっしゃいます。ご主人も人の手仕事なら1日中見ていられる程の『ものづくり』が好きな方。「主人は大工さんの姿勢に共感したところがあるんだと思います」と奥様はおっしゃいます。家に詳しいご主人と長谷川が話していく中で、「長谷川さんが棟梁をやってくれるのだったらお任せしよう」という気持ちに。手刻みに対する棟梁の姿勢を見込んでの最終決断でした。

手刻みでの家づくり

伝統構法手刻みの家 ほぞ

ご主人は家の工事中、ほぼ毎日現場に足を運ぶ熱心さ。家ができるまでの過程も楽しまれていました。さらに棟梁とは長く付き合える仲になり、今でも棟梁が手掛ける現場の見物にもいらっしゃいます。そんなご主人の家づくりへのこだわり、それは鉄骨構造より木造、加工してある合板より無垢の木材、そして機械より大工の手仕事など。そこにはご主人が考える本物のものづくりへのこだわりがありました。更にご主人の望みは「丈夫で家族が健康に暮らせる家、やすらぎの場所」。手刻みはその思いやこだわりに応えることのできる工法です。

伝統構法手刻みの家 お宅訪問

現在主流の手で刻まない機械化工法(プレカット)の歴史は実は短く約40年。それ以前の木造家屋は手刻みで建てられていました。それほど長い間、丈夫な家で安心して暮らしたいという願いから創りだされ、人の手が引き継いできたもの。それは人がつくる人のための家の歴史。機械化が進む世の中ですが職人の手仕事である手刻みは機械で真似することができません。そこには家づくりの本質が息づいてます。
(現在では手刻みの良さが見直され、機械でカットされた材に手刻みをプラスするような工法もあります。)

住んでみて

伝統構法手刻みの家 お宅訪問

ご主人「新しいこの家ではシックハウスの症状は一切出ません。それに、シンクに水滴が付いたままでも朝には乾いています」無垢の木の調湿性を体感されているようです。また高い断熱性能で寒い冬の朝も14~15度を切ることはないそうです。(断熱材※3家の仕様を参照)内装は家を支える柱や梁は塞がず見えるようにしてあります。そうすることで家の造りがわかります。ご主人は完成後もその造りを愛着持って眺められていました。奥様「ここに住んでからいくつか地震はあったみたいですが、ほとんど気づかないです」手刻みの耐震性を肌で感じていらっしゃるようです。また、木が乾燥する時に出るパキパキと鳴ってる音も、「木が生きている証だなって、音楽みたいに楽しんでいます」とおっしゃいます。

伝統構法手刻みの家

家族の健康、それは暮らしの中で作られるもの「うちの旦那さんにこういう家を建ててもらって感謝しています。気持ちがリラックスできる、木の香りがするこの家に満足しています」。また、Kさんご夫婦はお子さんにこの家を受け継いで欲しいという思いも。実はK邸には家を解体しないと取り出せないところにタイムカプセルを隠してあるそうです。中には家族の思い出の品が収めてあります。
取材中のご夫婦は穏やかでほがらかな笑顔。その様子から、ここが安心して暮らせる愛すべき我が家なんだということが自然と伝わってくるお宅でした。