日野市 「日本の家づくり」伝統構法手刻みの家
安心して暮らせる家 |
家族にとって大切な空間「家」。
「60歳にして持ち家はじめてなんです。それまでずっと工務店を探し続けていたんです。
終の棲家というか、みんなが納得して家ができたのはよかった」と奥様。
そんなK邸で今回お話を伺いました。
日本の家づくり~安心して暮らせる家 |
Kさんご家族が家づくりの上でこだわったこと、それは「無垢の家」でした。なぜ『無垢』なのか、、
以前リフォームされた家にKさん一家が住み始めた時、家族全員シックハウスの症状が現れたことにありました。原因は、壁紙の接着剤だったそうです。加えて、その建物は気密性が高い構造。調湿が出来ない家はカビの温床に。「パンが3日でカビたり、家具も裏側のベニヤがベコベコにたわんでいたり…。このような経験から、自分が作る家は接着剤を使わない無垢の家にしたいと考えていたそうです。
また、過去にご主人は一か月に30~40軒以上の家を見て、その家の価値を査定する仕事をされてきた方。更にご友人と共にログハウスを建てた経験も。今まで色んな家を見てきた分、自分が家をつくるならちゃんと納得できる良い家にしたいという想いを抱いていました。「家とは一番長くいる大切な場所。妥協なく造り、愛着を持って暮らしたい」とご主人。
工務店を決めるのは難しい。 |
「家はできている商品を持ってきて『これください』と言うものじゃないから」とご主人。どんな大工がどんな材料でどういう設計の家をいくらで建ててくれるのか…。インターネットなどで関東の工務店を探すと、数多くの工務店がヒットします。その中から自分の家を建ててもらう工務店を探すのは大変な作業です。
職人の手仕事に興味があったご主人はトレカーサ工事が手刻み(※2)でも施工することを知り、大工の棟梁から手刻みの話を聞くことにしました。棟梁の長谷川から手刻みの説明を聞いていると、手刻みに対する長谷川の熱意が伝わってきたとご主人はおっしゃいます。ご主人も人の手仕事なら1日中見ていられる程の『ものづくり』が好きな方。「主人は大工さんの姿勢に共感したところがあるんだと思います」と奥様はおっしゃいます。家に詳しいご主人と長谷川が話していく中で、「長谷川さんが棟梁をやってくれるのだったらお任せしよう」という気持ちに。手刻みに対する棟梁の姿勢を見込んでの最終決断でした。
手刻みでの家づくり |
ご主人は家の工事中、ほぼ毎日現場に足を運ぶ熱心さ。家ができるまでの過程も楽しまれていました。さらに棟梁とは長く付き合える仲になり、今でも棟梁が手掛ける現場の見物にもいらっしゃいます。そんなご主人の家づくりへのこだわり、それは鉄骨構造より木造、加工してある合板より無垢の木材、そして機械より大工の手仕事など。そこにはご主人が考える本物のものづくりへのこだわりがありました。更にご主人の望みは「丈夫で家族が健康に暮らせる家、やすらぎの場所」。手刻みはその思いやこだわりに応えることのできる工法です。
現在主流の手で刻まない機械化工法(プレカット)の歴史は実は短く約40年。それ以前の木造家屋は手刻みで建てられていました。それほど長い間、丈夫な家で安心して暮らしたいという願いから創りだされ、人の手が引き継いできたもの。それは人がつくる人のための家の歴史。機械化が進む世の中ですが職人の手仕事である手刻みは機械で真似することができません。そこには家づくりの本質が息づいてます。
(現在では手刻みの良さが見直され、機械でカットされた材に手刻みをプラスするような工法もあります。)
住んでみて |
ご主人「新しいこの家ではシックハウスの症状は一切出ません。それに、シンクに水滴が付いたままでも朝には乾いています」無垢の木の調湿性を体感されているようです。また高い断熱性能で寒い冬の朝も14~15度を切ることはないそうです。(断熱材※3家の仕様を参照)内装は家を支える柱や梁は塞がず見えるようにしてあります。そうすることで家の造りがわかります。ご主人は完成後もその造りを愛着持って眺められていました。奥様「ここに住んでからいくつか地震はあったみたいですが、ほとんど気づかないです」手刻みの耐震性を肌で感じていらっしゃるようです。また、木が乾燥する時に出るパキパキと鳴ってる音も、「木が生きている証だなって、音楽みたいに楽しんでいます」とおっしゃいます。
家族の健康、それは暮らしの中で作られるもの「うちの旦那さんにこういう家を建ててもらって感謝しています。気持ちがリラックスできる、木の香りがするこの家に満足しています」。また、Kさんご夫婦はお子さんにこの家を受け継いで欲しいという思いも。実はK邸には家を解体しないと取り出せないところにタイムカプセルを隠してあるそうです。中には家族の思い出の品が収めてあります。
取材中のご夫婦は穏やかでほがらかな笑顔。その様子から、ここが安心して暮らせる愛すべき我が家なんだということが自然と伝わってくるお宅でした。